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女性陶芸家 ルート・ブリュック の色褪せないモダンアートに触れる

陶芸家の友人に誘ってもらい『ルート・ブリュック 蝶の軌跡』を観に伊丹市立美術館へ行ってきました。

本国フィンランドで、生誕100年を記念して開かれた大回顧展きっかけに、再び国内外でファンを増やしているとルート・ブリュック。

私は全く名前を知らなかったのですが、何の知識もなく観たその素敵な作品に、完全に心奪われてしまいました。

そこでルート・ブリュックという芸術家と、その作品に触れた感想をつづりたいと思います。

ルート・ブリュックとは?

フィンランドを代表するセラミックアーティスト

1916年 スウェーデンのストックホルムで画家・蝶類学者の父と工芸品作りを得意とする母という芸術的な家庭に生まれ、その後フィンランド ヘルシンキに移住

学生時代は建築家志望だったが、激務を心配する兄たちの説得により進路を変更 グラフィックアートを学びテキスタイルデザインなどを手掛ける

当時のアラビアのアートディレクター クルト・エクホルムにその才能を見込まれ、研究生としてアラビアの美術部に採用され、その後、専属アーティストとなる

独自で技法などを発展させ、10年足らずでミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞し、国際的にも評価される

建築やテキスタイルの技法を取り入れたり、素材にこだわらない表現で陶芸の枠を超えた作品は、芸術の世界を広げたとも言われ、その功績を称えられている

前期と後期で異なる作品 どちらの魅力にも圧倒される

ルート・ブリュックの作品は、前期と後期とではその印象が大きく変化していきます。

前期は、人物や鳥、食卓にあるものなど、身近にあるモチーフを親近感のある絵と繊細な色彩・技術で陶板で表現したものが中心です。

1953 ヴェネツィアの宮殿

誰しもが共感できるような個人的で女性らしいモチーフが、色褪せない洗練されたデザインで表現されていて、とりわけ女性はぐっとハートを掴まれること間違いないです。

後期は、模様の違う小さなタイルを何枚も組み合わせたレリーフやモザイク壁画など、抽象表現へと移行していきます。

色々な形をした小さなタイル

キュビズムなんかと同じ原理なのかもですが、物の形や自然や心の現象を細分化して、それを組み直していくと、幾何学的なものになるのですね。

具象的なモチーフから抽象的なイメージへ。その変化を目の当たりにし、こんなにも表出するものが違う表現を同じ人が持ち合わせているなんて!と驚きました。

ブリュックは、版画や染織、建築など、自分の興味や知識のさまざまな要素を取り込み、陶器という枠にとどまらない、新しいアートの形を作ったのだそうです。

特に後期の作品は、無数の小さなタイルがに組み合わせて作られる、気が遠くなりそうなスケールだったりして、自分の内にある形を、持てる全てで表現するのが「芸術家」なんだと圧倒されました。

女性陶芸家という道を切り開いた人生

2019年後半のNHK朝の連続ドラマでは戸田恵梨香さん主演で、日本の女性陶芸家の草分け的な人物である神山清子さんという方をモデルにした話が始まりましたね。

ルート・ブリュックが陶芸家として歩みだした1940年頃のフィンランドも、女性の社会進出がまだ一般的ではなかった時代。

彼女の陶芸家として歩んだ道は、後進の女性陶芸家に新たな道を切り開きました。

フィンランドを代表する女性陶芸家となった彼女の作品は、現在もヘルシンキ市庁舎に巨大なモザイク壁画が飾られていたり、エスポ―近代美術館にはたくさんの所蔵品があるそうです。

私もいつかフィンランドに、その作品たちを見に行ってみたい!

2020年にかけて日本で見られるブリュック展

ルート・ブリュックを本格的に紹介する展覧会は、今回が日本で初めてとのこと。

東京ステーションギャラリーを皮切りに、4箇所で開催されます。

私が訪れた伊丹市立美術館の展示は10月20日(日)まで開催されています。

その後は、2020年4月25日(土)~7月5日(日)まで岐阜県現代陶芸美術館、7月18日(土)~9月6日(日)久留米市美術館と順次開催予定とのこと。

伊丹市立美術館では、3フロアに展示が分かれていて、前期の作品を中心とした1・2フロアでは写真の撮影をすることができました。

美術館自体も面白くて、とても素敵な芸術鑑賞になりました。

芸術の秋。皆さんもぜひ、時代が変わっても色褪せないルート・ブリュックの作品の魅力に触れてみてください。

関連情報

本展覧会に先駆けて刊行されたルート・ブリュックの本がありました。

ブリュックを読み解く9つのエッセンスで章立てを構成。知られざるアーティストの多層的で豊かな魅力を日本を代表するクリエイターたちの言葉から紡ぎ、美しい色と詩情をたたえた作品世界へと誘います。ムーミンやマリメッコのカラフルでかわいらしい世界とは一味違うフィンランドに触れる1冊です。

Amazon商品説明文 内容(「BOOK」データベースより)

minä perhonenの皆川明さんや陶芸家の鹿児島陸さんたち日本のクリエイターの文章が寄せられていています。