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ドラマ『ウエストワールド』シーズン1感想 にじむアンドロイドと人間の境界

 

1973年に発表された同名映画のテレビドラマであるこの作品。

「ウエストワールド」と呼ばれる西部時代を疑似体験できるテーマパークが舞台。テーマパークにはホストと呼ばれるアンドロイドがいて、アンドロイドたちの変化や人間との関係が描かれます。

観る前に想像したのは、人間VSアンドロイドっていうありそうな展開。だけど、そういう単純な話では全然ないです。

とにかく内容が深くて、見応えがすごい。幾重にもなった要素が一つの結末に繋がっていく作り込まれたストーリー。じっくり観て楽しむタイプの大作でした。

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《作品について》

《データ》

  • 監督・製作者:ジョナサン・ノーラン
  • 原作:マイケル・クライントン『ウエストワールド』
  • 放送:2016年10月~

《キャスト》

  • ロバート・フォード博士(アンソニー・ホプキンス):ウエストワールドの創始者でホストの設計やシナリオ作成を行う天才科学者
  • 黒服の男(エド・ハリス):ワールド内でホストを傷つけながら、何かを探している謎の男
  • ドロレス(エヴァン・レイチェル・ウッド):農場の娘。ウエストワールド創始時に製作された最古のホスト。
  • バーナード(ジェフリー・ライト):プログラム部門の責任者。息子を病気で亡くしている
  • ウィリアム(ジミ・シンプソン):ワールドを楽しめないでいる客 ドロレスと出会う
  • メイブ(タンディ・ニュートン):娼館の経営者のホスト。過去は別の設定だった。

《あらすじ》

舞台は近未来、アメリカの西部時代を疑似体験できるテーマパーク「ウェストワールド」。パーク内にいるホストと呼ばれる人々は、全て人間の手によって作られ、制御されているアンドロイド。

客は高額の入場料を支払い、パーク内で欲望の赴くままに行動する。壊されたホストは修復され、またワールドに戻される。客が来るたびにリセットされ、シナリオに合わせ繰り返されるウェストワールドの日常。

そんな中、高性能で自意識を持つホストたちは、プログラムのアップデートの影響か、次々に設定外の行動を起こすようになる。不具合を探る設計者たち。ウエストワールドで一体何が起きているのか?

《ドラマチック感想》

真相が明らかになっていく、見せ方が面白い!

アンドロイドの繰り返される日常を描いているように見せて、少しずつ明らかになっていく異変の真相。過去と現在が複雑に構成されていて、さらに幾筋もあるストーリーの筋。最初は今いち理解できないまま進む部分もあるんだけど、それを横に置いといても、見続けてしまう面白さがあります。

映像の美しさやアンドロイド役の俳優たちの演技。この世界に一体何が起きてるの?というドキドキに引っ張られながらの鑑賞。

観終わった後は、とにかく脚本の素晴らしさに感嘆です。ウェストワールドをめぐる経営問題から、ワールド内で起こるアンドロイドと人間の行動、すべてが物語に欠かせない要素になっていました。

原作の映画とは異なる視点

1973年に発表された元となった映画の『ウエストワールド』は、人間側の視点から、制御できなくなったアンドロイド、というテーマで描かれているようです。

だけどこのテレビドラマ版は、アンドロイド側の視点が主体。消去されたはずの記憶を夢として見るアンドロイドたち。自分の存在に疑問を持つようになり、変化していく姿が描かれています。

変化は設定外の動きとなり、それを「バグ」として調査するスタッフたち。だけど、アンドロイドが変化してしまう設定自体が、実は作為的なもので。

意図的に組み込まれたプログラムと経験によって形成されるアンドロイドたちの感情。人間と同じように、愛・悲しみ・憎悪が芽生え、その感情に苦しむ個体も。

アンドロイドの感情は作られたものか?生まれたものか?その問いが視聴者にも投げかけられます。

 

元となった映画はこちら。40年近く前のものとは思えないストーリーの斬新さと、アンドロイドを演じたユル・ブリンナーの魅力に、日本だけでなくアメリカでも評価が高い作品です。

近未来と荒野 両極の世界の映像美

製作費が膨大だったことも話題になったこの作品。

アンドロイドたちが生産・管理されているセンターの無機質でハイテクな近未来感と、ウェストワールドの荒野。両極端だけど、どちらもすごく美しい映像です。

ウェストワールドは、過去の世界を演出しつつも、衣装とか小物はモダンな要素もあって、舞台美術へのこだわりが細部にうかがえます。

あと、オープニング映像も素晴らしいのですが、製作したのは、同じくHBO作成の人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のオープニングを作ったElasticという会社です。関わっている人たち、すごいセンスと才能だと思います。

オープニングの映像↓

HBO公式/youtube

『ゲーム・オブ・スローンズ』の記事はこちら

アンドロイドが人間そのもの。

見どころのひとつは、アンドロイドが人間そのものに見えるところ。本物の人間が演じているから当然なんですが…。

動いているときは普通の人間なのに、制御をかけられて停止すると、パタっと命の色味がなくなって、たちまち人形のように!その様子に何回もドキッとさせられて。

特殊メイクとか動きとか一部CGを入れているのかな?それくらい、ロボットの時の生気の抜け方や動きがすごいので、逆に人間そのもののアンドロイドっていう表現になってしまいます。

日本のアンドロイド製作の第一線にいる石黒浩教授が作るロボットもすでに相当凄いですが、このウェストワールドのアンドロイドたちのように、人間よりも人間らしいアンドロイドが、そんなに遠くない未来に出現するんだろうな。

まとめ:深すぎる哲学要素を持ったSF作品

思いのままに行動できる世界。人々は、現実の生活では得られない感覚を引き起こされてしまいます。欲望をさらけ出したときに人間が求めたのは、官能や残虐性。逆に、虐げられるアンドロイドから芽生えたのは、人間らしさ。

偽物の世界で、何かを探し求める人間とアンドロイド。相互作用で引き起こる「生」や「存在」についての疑問と欲求。ストーリーが進むほどに、人間とアンドロイドの境界がにじんでいきます。

「概念に形はなく、記憶というストーリーから湧き上がる感情に、ロボットも人間もない」と話すフォード博士。アンドロイドと人間の違いを達観しているようなフォード博士の真意も複雑です。

途中、この作品はSFじゃなくて、哲学要素の強いヒューマンドラマを観ているんじゃないかと思う程、「生」とは?を考えさせられます。でも、やっぱり人間とアンドロイドっていうテーマがあってこそのストーリー。

・・・・深い。とにかく深すぎるぐらい、内容が深い作品です。

シーズン2の放送も決定!

続きが気になる要素もたくさんありつつ、終了したシーズン1。

2018年に米HBOでシーズン2の放送が決定しているそうです。良かった!

そのシーズン2には、日本の俳優真田広之さんも出演予定。確かにシーズン1の最後、たくさん侍のアンドロイドがいる部屋がありました。ウエストワールドに昔の日本が舞台となるエリアが登場するのかな?

それまでに、まだ観ていない人にはぜひ視聴をおすすめしたい作品です。

2017年11月現在、huluでシーズン1が視聴できます。興味のある方はぜひ観てみてください!

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