邦画

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』岩井俊二監督  感想 甘酸っぱい夏の思い出



打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [DVD]

この夏、岩井俊二監督のこの作品が、アニメ映画化され放映されます。

若かりし頃にオリジナルを観た世代としては、どんな感じになっているのかとても気になります。アニメのこの作品も観てみたいですが、昔を懐かしみ、まずは再度オリジナルを視聴してみました。

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《作品について》

1.データ

  • 監督・原作・脚本:岩井俊二
  • 公開:1993年「if もしも」の一作品としてテレビドラマで放送 その後1995年映画化
  • 受賞:日本映画監督協会新人賞

2.キャスト

  • なずな(奥菜恵):主人公 両親の離婚で転校することに
  • 典道(山崎裕太):なずなが好き もしもあのとき…と典道が念じたことで、物語が動く
  • 祐介(反田孝幸):なずなが好き なずなに花火大会に誘われるが怖気づいてしまう
  • 三浦先生(麻木久仁子):なずなたちの担任の先生

3.あらすじ

夏休みの登校日。その日は街の花火大会の日。

学校の後、典道と祐介はプールで50m泳ぎの対決をする。賭けたのはなずなへの告白。

ターンで典道が足を強打し遅れると、その間に祐介は典道を抜きゴール。顔をあげた祐介に、一緒に花火大会に行こう。5時に迎えに行くからと、なずなが言う。

少年たちは、花火は横から見ると平べったいのか、丸なのかで盛り上がる。自分たちの目で確かめるために、5時に待ち合わせ、灯台へ向かうことに。

なずなとの約束をすっぽかし、祐介は灯台へ行くことに。一方、プールでケガした足を診てもらうため、典道は祐介の家である病院に行く。そこで待ち合わせをすっぽかされたなずなに会う。

浴衣姿に大きな旅行カバンを持っていたなずな。彼女は泳ぎで勝ったほうを誘うつもりだったと典道に言う。

そこになずなのお母さんがやってきて、抵抗するなずなを無理やり引っ張り連れていく。

典道は強く思う。もし、あの勝負で自分が勝っていたら…。そこで物語はプールの勝負の時まで時間が戻る。

《ドラマチック感想》

◆とんでもなく時を感じてしまった

何ということでしょう。映像が古くてびっくりしました。

冒頭で典道が見ているテレビに映っているガチャピンとムック。そうそう、私たちの時代はガチャピンとムックですよ。そして、髪の毛を「すく」というカット技術が今みたいになかった時代。どの女子も毛先がそろって、髪の毛のボリュームが厚いことと言ったら。なずなの三つ編みがわらじのようです。子供たちの話すサッカーのネタとかツッコミとかも昭和の時代感がすごくて。

そもそも題名にもなっている、花火が横から見ると平べったいか丸いかなんて、今の時代、スマホで調べたらすぐ答えが出てくるでしょ?でも、インターネットがなかった当時は、本当にどうかわからなかったんです。

昔、親世代の作品を観て私が思ったように、今どきの小中学生がこの映画を観たら「すごい昔」と思うんだろうな。いつの間にかえらく歳をとったんだなと若干ショックを受けました。

◆いつの時代も美少女は美少女

それはさておき。今回アニメ版でなずな役をする広瀬すずちゃんはまさしく当時の奥菜恵ちゃんみたい。顔も芸能界での立ち位置もよく似てると思います。

いつの時代も美少女は美少女。とにかくこの作品の奥菜恵ちゃん演じるなずの美少女ぶりがすごい。16歳に見えるように背伸びした服に化粧。男を振り回す小悪魔的要素。将来男の人を虜にする片鱗がうかがえます。だけど今はまだ無理をしても大人になれないこともちゃんとわかってて。

一方、好きだったなずなに逆に告白されて動揺して逃げてしまう祐介や、なずなの行動に振り回される典道。横から花火を見るために馬鹿らしくも奮闘する男子たち。小学生あたりの男女の精神年齢の違いがよく表現されています。

◆岩井俊二監督らしさ

当時、画像に加工を加えることはめずらしかった時代。岩井俊二監督は、フィルムで撮ったような雰囲気を出すなど、映像美にこだわったそう。そして、この作品で高く評価されたのをきっかけに、現在のような映画界での地位を確立するに至ったそうです。

夜のプールのシーンや、灯台を目指して歩く少年たちの姿。その映像美や、子供たちの純粋さがなんともうまく表現されていて、岩井俊二監督らしい青いさつなさを感じられる作品です。

◆アニメ映画化はどんなふうに?

アニメ界の最高峰のスタッフで制作された『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』。

原作をリスペクトして、今回のアニメ映画では原作のシーンをそのままアニメにしている箇所がいくつかあるとのこと。その対比と、現代ならではに設定されたシーンなどを見比べてながらみるのも面白そうです。

公開は2017年8月18日。ぜひ観たい作品です。