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『ビューティフル・マインド』あらすじ・感想 天才ジョン・ナッシュの栄光と苦しみ

Amazonプライムビデオで「あなたへのおすすめ」に出てきた作品。個人的大絶賛の『イミテーション・ゲーム』の履歴から抽出されたようです。しかもアカデミー賞受賞作品。面白いに違いないと視聴することに。

この作品は『イミテーション・ゲーム』に登場するアラン・チューリングと同じく、実在する天才数学者ジョン・ナッシュの半生が描かれています。ノーベル経済学賞で知られるジョン・ナッシュ。その人生はただ栄光で満ち溢れたものではなく、統合失調症という精神疾患に苦しんだ人生でもありました。

実際とは異なる点もあるようですが、本人が存命中に発表されたこの作品。ジョンの偉業と病気の苦しみについて、本人目線で知ることができます。天才とは何か?人生とは何だ?と考えさせられる作品でした。

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《作品について》

1.データ

  • 監督:ロン・ハワード
  • 原作:シルヴィア・ネイサー
  • 公開:2001年(米)、2002年(日)
  • 受賞:2001年アカデミー賞(作品賞・監督賞・助演女優賞・脚色賞)、ゴールデン・グローブ賞(作品賞・脚本賞・主演男優賞・助演女優賞)

2.キャスト

  • ジョン・ナッシュ(ラッセル・クロウ):主人公 天才数学者 統合失調症に苦しむがノーベル数学賞を受賞
  • アリシア・ナッシュ(ジェニファー・コネリー):ジョンの妻 献身的に闘病を支える
  • パーチャ―(エド・ハリス):ジョンの幻覚 国家機密に関わる任務をジョンに与える
  • ローゼン医師(クリストファー・プラマー):精神科医 ジョンの治療にあたる
  • チャールズ(ポール・ベタニー):ジョンの幻覚 大学院時代のルームメイトで親友

3.あらすじ

プリンストン大学院に入学したナッシュ。そこで「全員が自分とグループ全体の利益を求めると得られる」という思い付きから、「ゲーム理論」を組み立てる。その功績から、ウィラー研究所への推薦を手に入れる。

ウィラー研究所では研究と与えられた仕事をこなす。そんな中、国防総省の役人でパーチャ―と名乗る人物が現れ、極秘の任務を与えられる。それは雑誌に隠されたソ連軍の暗号解読を行うことだった。

極秘の任務に関わる中、ジョンは講義の受講生だったアリシアと出会い結婚。アリシアは妊娠をする。そのタイミングで、暗号解読に関わっていると情報がもれ、何者かに襲われてしまう。身の危険を感じ、家族を守りたいジョンは極秘任務から手を引きたいとパーチャーに伝えるが…。

《ドラマチック感想》

◆天才が見る世界

ョンは「この世の全てを支配できる理論」を見つけることを目指しました。アラン・チューリングにも思ったけど、天才と呼ばれる人々は、他の人が見ることができない世界を見ることが出来る。だから、大勢の人が感じている世界との齟齬が生じてしまうんでしょうね。そのひずみが、精神的な苦しみを生む結果になってしまうのかもしれません。

わかる人にはより楽しめたんだろうなと思うんだけど、窓に書く数式とかも、私は全然理解できない。だけど世界に起こる事象(鳩の進み方とか)は、そんな数式に置き換えることができるのか!とへぇ~ボタン連打でした。

◆統合失調症への理解

統合失調症という病気の不思議さと恐ろしさ。一般的にジョンに出た症状のような幻覚や幻聴がおこるようです。自分が見ているものが幻影だなんて言われても、信じられないのも当然です。そして自分が信じられないという状況がどれだけ不安か。

この病気で本人が苦しいのは当然だけど、家族の苦しみも相当。こういう情報は、身近に同じ病気の人がいないとなかなか触れることがないし。映画の中では様子のおかしいジョンを揶揄するシーンがあったけど、世の中にはたくさん同じ病気で苦しんでいる人たちがいて、そういう人たちの理解にも繋がるといいなと思いました。

しかし、ジョンが治療を受けていた1950年代は電気ショック療法が行われていたんですね。映像で見るとなかなかショッキングです。

◆ラッセル・クロウの体の厚み

ラッセル・クロウ演じるジョン・ナッシュは、どんな流れで配役が決まったんでしょう。実際のジョンは細身のようなので、ラッセル・クロウの厚みのある力強い肉体と雰囲気が一致していなくて。

特に大学院時代は違和感があります。女の子を誘うシーンでは変なことを言ってひっぱたかれますが、ラッセル・クロウの艶っぽい魅力が隠しきれてなくて、普通にかっこいい人です。そこらへんはベネディクト演じたアラン・チューリングのほうが変人ぶりが伝わって良かったと思いました。

でも、老後にかけての演技力はさすが。幻想を振り回され苦悩する姿は真に迫っていました。メイク技術も素晴らしくて、違和感なく老人に見えました。ただ、ジェ二ファー・コネリー演じるアリシアの美しさは、そのメイク技術でも隠しきれていませんでしたが。

◆一人の人間の人生の壮大さ

ジョンの目線から大学院入学からノーベル賞受賞までが描かれた本作。理念や仕事への情熱。友情と愛情。結婚や病気。

やっぱり世界に影響を与えた人物の人生には、驚きや尊敬の念など、色々な思いが沸き上がりますね。こういう実在の人について描かれた映画は、その人物の偉業について知れるだけでも観て価値があるんじゃないかと思います。

ただ、ジョン・ナッシュという天才は、その実績が人類に多大な貢献をすることになったから、こうして人々に苦労や栄光をを伝えることができたんだけど、たとえノーベル賞を取っていなくったて、一人の人間の人生の壮大さを感じずにはいられません。

そして、それって全ての人の人生にもいえるんじゃないかと。ホームレスとか普通の主婦も、人生について聞き取りして映画作ったら、案外ジョンナッシュを超える壮大な物語になるかも。まあ、有名人じゃない人の伝記なんて、誰が知りたいねん!って話ですが。

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