イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 [DVD]
観終わった後、放心です。フィクションの威力。世の中、こちらが知らないだけで、たまげるようなことが行われているもんです。
第二次世界大戦時、ドイツ軍が使用していた暗号機エニグマ。飛び交う暗号を解読できれば、敵の動きを掌握することができる。連合各国で解読が試みられるが、難解すぎるエニグマは解読不可と言われていた。しかし、チューリングは自身が設計・作製したマシンによって、ついにエグニマの解読に成功する(実際は少し脚色があるようですが)。
その結果、戦争の終結は2年早まったと言われているそう。このアラン・チューリングという偉人とその偉業について知ることができます。それだけでも、この作品を見る価値があると思います。
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《作品について》
1.データ
- 脚本・製作総指揮:グレアム・ムーア
- 原作:アンドリュー・ホッジス
- 公開:2014年(英・米)、2015年(日)
2.キャスト
- アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ):天才数学者 暗号解析者としてブレッチリー・パークに勤務し、エニグマの解読を行う
- ジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ):アランの作ったクロスワードによる人員募集に応募し採用され、アランと一時期婚約関係になる
- ヒュー・アレグザンダー(マシュー・グッド):2回チェスの全英チャンピオンになった経験があり、当初、エニグマ解読チームのリーダーを任せられる
- ジョン・ケアンクロス(アレン・リーチ):解析チームのメンバー アランが同性愛をカミングアウトした相手で、彼には暗号解読の他にも重要な任務があった
- スチュアート・ミンギス(マーク・ストロング):秘密情報部(MI-6)長官
《ドラマチック感想》
冒頭のチューリングの語り。これはある容疑で取り調べを受ける際、刑事に向けられた彼の言葉。しかし、視聴者に向けられた独白のような演出で語られます。「話を聞くためにここに残るなら、それは君が決めたこと。注意して聞け」と。
語られたのは大二次世界大戦下でチューリングが関わった超がつくほどの機密事項、ドイツの暗号機エニグマの解読について。159×10の18乗という膨大なパターンが毎日組変わるという、気の遠くなりそうな数字に、彼はマシンにはマシンで対抗する、と自動で特定の文字を拾い、暗号を解読する装置を製作。その装置をクリストファーと名付けます。
このときのチューリングの実績が、現代社会の発展の元になっていると言っても過言でない、コンピューターの礎を作りました。
当時、自動計算装置を作るだけでもすごいのに、さらにその先のAI(人工知能)を目指していたチューリング。まさに天才としか言いようがない。彼の知性を表現するそれ以上の言葉が出てこないのがじれったいほど。
また、この作品で戦争が人々に与えるダメージはもちろんですが、国家というものの闇というか、深層にも触れることがきます。スパイと分かっている人物をわざと雇い、適度に情報がソ連に流れるようにしていたMI-6のくだりとか。
もう、世の中、怖すぎ。自分の知っている情報が、どのレベルのもので、どこまでが真実かさっぱりわからなくなります。
私なんかがはっきりと情報を握っているのは、我が家の家計くらいなもんです。いわんや、世界を変えてしまうような機密事項なんて一生触れることはないでしょう。そんな情報を知り、さらに自分が関わるというのはどういう感じなんだろう?想像ができません。
自分は「機械か?人間か?英雄か?犯罪者か?」。能力があるために、チューリングが見た世界。その世界に関わって成し遂げたこと。成し遂げたことで得たもの、失ったもの。
戦後、チューリングは「普通」でない自分、そして孤独に苦しみました。
そんな彼にジョーンがかけた言葉が胸をつきました。「あなたが普通じゃないから、世界はこんなに美しい」。ほんとに、それ。チューリングは、他の人が見ることができない世界を見て、そこに私たちを引き上げてくれました。
同性愛者として逮捕されたチューリング。服役か科学的去勢を選択することになり、後者の2年間服薬しながらも仕事が続けられる方を選びます。しかし、服薬を始めて1年後、自殺。それから約60年後の2013年、エリザベス女王により功績をたたえられ、死後恩赦を与えられたと映画の最後に流れるテロップ。
なんじゃい、それ!と思わずにはいられません。死後に恩赦って。そもそも、そんな法律さえなければ。
チューリング曰く、マシンは「違った風に考える」。現在、盛んに開発が進められているAI。AIは作り手のくせによって、個性が出るそうです。誰がどう作ったかで思考が変わってくる。もし、チューリングが長生きして、もっと業績を残すことができていたら。クリストファーはどう思考するようになったか。その世界を見てみたかったなあ。