ゴッホの絵が使われたアートワークを見て、TSUTAYAでジャケ借りした作品。Amazonプライムで見つけたので、再視聴してみました。
始まりから3分間ほど、夜が訪れるまでのパリの日常が、ジャジーな音楽とともに映し出されます。エッフェル塔や凱旋門など、お馴染みの風景からちょっとした通りまで。この映像だけで、ドラマチックな物語が始まる予感満々。高まる期待。めくるめくパリ。そして、最後は、パリが大好きという監督ウディ・アレン一押しのパリで締めくくり。
歴史を彩るたくさんの有名人が登場し、観客も主人公と一緒にタイムスリップさせられてしまう感じ。知っている名前も知らない名前も、作品をチェックしたくなります。アート好きの方は特に必見の作品です。
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《作品について》
1.データ
- 監督・脚本:ウディ・アレン
- ポスターアートにゴッホ『月星夜』を使用
- 公開:(西・米)2011年、(日)2012年
2.キャスト
- ギル・ペンダー(オーウェン・ウィルソン):小説家を目指す売れっ子脚本家。1920年代を芸術の黄金期として憧れている
- イネス(レイチェル・マクアダムス):ギルの婚約者 ギルが小説家を目指すことを快く思っていない
- アドリアナ(マリオン・コティヤール):1920年代の美女。
3.あらすじ
婚約者のイネスとパリに訪れたギル。偶然出会ったイネスの友人夫妻とワインの試飲会に行った帰り、酔ったギルは一人パリの街を歩いてホテルへ戻ることに。しかし道に迷ってしまい、ある通りの階段で座り込む。そして、深夜12時を知らせる鐘の音を聞いた。そのとき、クラシックカーが彼の前に止まり、パーティーに誘う。連れられて行った先のパーティーで、初見だが、良く知っている人物たちと出会う。その人物たちとは…。
4.登場する芸術家たち
- フィッツジェラルド夫妻:夫婦ともに小説家。スコットはアメリカ文学を代表する存在で『グレート・ギャッツビー』の著者
- コール・ポーター:作曲・作詞家 ミュージカルなどで多くのスタンダードナンバーを残す
- ヘミングウェイ:小説家 ノーベル文学賞受賞 代表作『日はまた昇る』『老人と海』など
- ガートルード・スタイン:芸術家が集まるサロンを開く 美術収集家で、自身も執筆活動を行う
- パブロ・ピカソ:世界的有名画家 数多くの作品を残す
- サルバドール・ダリ:シュルレアリスムの代表的な画家
- ロートレック:画家 ムーランルージュのポスターで知られる
そのほか、ジャン・コクトー、マーク・トウェイン、モディリアニ、ブラック、ジューナ・バーンズ、ルイス・ブニュエル、マン・レイ、アンリ・マティス、ゴーギャン、ドガ etc.
《ドラマチック感想》
真夜中のパリの街で、誘われるまま乗った車。なぜか憧れの1920年代にタイムスリップしてしまった主人公のギル。
1920年代のパリでは、出会う人がすべて、かなりの有名人。始めは状況を把握できず、いちいちびっくりします。その驚きと戸惑いの表情がリアルで面白い。ギルだけでなく、数々のビッグネーム登場に驚きつつ、音楽とダンスとお酒、1920年代の社交場はこんな感じだったのか、と私も心躍りました。
アカデミー賞の脚本賞をとったこの作品。作中、アレンのエスプリの効いた演出がたくさんあります。
ギルが、その芸術家たちの残した言葉や作品について、自分の意見のように話して、影響を与えている設定とか。逆に、「拒絶の心理」で、ギル自身が気づいていないことを、ヘミングウェイが指摘したり。
そして、いつの時代の人も昔を振り返って、あの時代が良かったと過去に憧れる展開。
黄金期への憧れのループを目の当たりにして、ギルは悟ります。「現在って不満なものなんだ、それが人生だから。前に進もうと思ったら幻想は捨てるべき」、と。そして、自分が本当に望む姿になるべく、価値観のあわない婚約者と別れて、パリに住むことを決意。
タイムスリップしたり、別れの修羅場があったり、文字にすると大事件な設定ですが、とんとんとん、と小気味よくストーリーは進みます。雰囲気は終始、自然体でライトな感じ。
っていうか、主人公のギル。真面目で誠実そうなのに、次から次へと割とすぐに恋に落ちてしまって。それもパリの街にかかった魅惑のマジックのせい?
とにもかくにも、パリの魅力がたっぷりとつまった、素敵な作品です。