売れに売れている、今話題の本を読みました。
宮崎駿監督が製作中の新作長編アニメーションの題名も、この歴史的名著から取ったとのこと。
『君たちはどう生きるか』。
原作を羽賀翔一さんの絵で漫画化にした作品を読んだ感想です。
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《作品データ》
- 原作:吉野源三郎
- 漫画:羽賀翔一
- 発表年:(原作)1937年 (漫画版)2017年
あらすじ
中学生のコペル君。「コペル」は地動説を唱えたコペルニクス風の考え方をした甥を称えて、叔父さんがつけたあだ名。
コペル君は、生活する中で行き当たった「気づき」や「悩み」を叔父さんに相談します。それは時代や世代を超えて、誰の人生にも起こりそうな社会的・心理的な命題がテーマ。叔父さんは、コペル君への回答として、どう考えるか、どう生きるのか、そのヒント・伝えたいことをノートに記します。
ノートに記された叔父さんの言葉や思いを受け、コペル君はどう生きたいかを自分で決断していくというストーリー。
ドラマチック感想
1.一番ガツンときた言葉
この本を読んで、何も感じない人なんていない!と断言できるくらい、人生における大切な教訓が散りばめられています。
80年前も現在も変わらない、人生の命題たち。ものの見方・いじめ・貧困・過ち、どのエピソードも、わかりやすい例えを交えながら、コペル君を通して、読者にも問いが投げかけられます。
その中で、今の私に一番ガツンときた言葉はこれ。
たいがいの人が、手前勝手な考え方におちいって、ものの真相がわからなくなり、自分に都合のよいことだけを見てゆこうとするものなんだ。
マガジンハウス 漫画「君たちはどう生きるか」 P52より
むかし、自分(地球)ではなく、天が動いていると信じられていた天動説を例にして、自分を中心に物事を考えていくと、世の中の本当のことがわからないままになってしまうよ、という説明の中の一文です。
むむむ、私はまさに、その手前勝手な考えにおちいってる人ではないですか…。
子育てから仕事のことまで、思い当たる節がたくさん。
自分を中心に物事を考えて、全体を見ていないかったことを、はっと気づかされました。
2.なぜ、この本が共感を集めているか
この本を絶賛している糸井重里さん。テレビのインタビューで、大人たちの共感を集める理由について、こう語っています。
「いま、力のないエリートが増えている。いろいろ分かりたいし、分かっているけど、自分に何ができるかに繋がらない」
高度情報社会の現代、自分とは違うさまざまな価値観に触れることが出来ます。だけど、たくさん知ってしまうことで、かえってみんな、自分の考えをまとめることが苦手になっているのかもしれません。
一方、この本が刊行されたのは1937年。今とは学校教育の在り方も違うし、情報も圧倒的に少なかったでしょう。その分、自分自身とじっくり向き合い、社会に対して為すべきことが、今よりも明確にわかる時代だったのではないでしょうか。
そんな時代に執筆され、さらに古びないその思想は、生き方の指針としてゆるぎない強さがあります。
今も昔も、社会で求められているのは、自分で考え、行動できる力です。
情報や選択肢が多く迷ってしまう現代人が、「生き方」を支えるための軸や指針を、この本に求めるのは必然なのかもしれません。
3.大人も子供も読むべし
大人が読んでも、心に響きすぎるこの本。
今の自分を色々反省し、いつの間にか置き去りにしてしまった「こうありたい」自分を見つめなおす機会になりました。
それに、「叔父さん」のように、自分の中に答えをちゃんと持っていて、それを子供に伝えることができる人間になりたいなあ。
そして、やっぱり子供に読んでほしいです。
きっと、人生の至る場面で、この本の内容を思い出すでしょう。そして書かれてある言葉を支えに、自分で考えて前に進んで行く。そんな力を与えてくれる本です。
小学生の息子にはまだ少し難しいだろうけど、是非読んでと勧めたいです。漫画版だと楽しんで読んでくれそうです。
「君たちはどう生きるか?」
皆さんはどう読んだのでしょうか?
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